私たちの物語 #32~やっぱり...わかんないよ~
「この先が、銅山の最深部みたいだね。」
「や~と、ここまできたぜ。」
「ヘカトンケイル族以外の魔物もたくさんいたからね~。さっさと終わらせて、今度こそしばらくお休みしたいよ。」
「そうだな。せっかく懐も温まったんだし、ぱ~っと使いたいぜ!」
「こらこら、まだ終わってないんだから、気を抜かないよ。」
「わかってるよ!それじゃ、よろしく頼むぜ。トトレイ。」
「行きます!」
「ねぇ。なんでさっき、動かなかったの?」
「ん?なんでって、動きながらより、止まってる方が矢が当たるだろ?」
「でも、仕留められなかったら、死ぬかもしんないじゃん!」
「それは...やれるって自信があれば、やるだろ?」
「でも、もしかしてってことが...」
「そん時はそん時だ。慢心してた。それだけだろ?」
「あんたがやられたら、次は私なんですけど!」
「あ...それは考えてなかったな。」
「次からは気を付けてよね。」
「ああ、わかったよ。」
「...でも、矢ってのは俺の手を離れていくもんなんだ。」
「なに?」
「さっきの話だよ。止まってる方が良いって話だ。弓矢は便利だ。遠くから攻撃することができる。でも、飛んでいく矢に俺が何かできるわけじゃない。放ったら最後、もう何もできない。だから、矢が弓を、俺の手を離れるまでが重要なんだ。」
「だから動かないの?」
「だから動けないんだよ。」
「よし!もうすぐだ!」
「みんな、踏ん張りどころだよ!」
「アレックス、一体漏れた!」
「倒しても、どっからか出てくるんだ。気にするな!親玉をたたく!」
「私がしっかりカバーするよ!」
「やるぞ!......!?トゥーグロナ、Djのカバーだ!」
「えっ!?って、またボーっとしてるのかい!?」
「くそ!オレが片を付ける!」
「アレックス早く!」
「くそったれが~!!!」
あの時の言葉がやっとわかってきた。
まだ。まだよ...
放ったら最後...、しっかり狙って。極限まで引き絞る。
ただ、標的を見つめて、それだけを考える。
アレックスの魔法だけじゃ倒せない。
私がとどめを刺す!
「くそったれが~!!!」
「うわっ!」
「ま、間に合った~。」
「ありがとう。トゥーグロナ。」
「あんた...さてはわざとやったね?」
「倒れた!」
「よし、雑魚をやるぞ!」
「Djは!?」
「なんとか間に合ったよ~。」
「助かった~。」
「お前、何してやがんだ!今度もトゥーグロナが守ってくれたからいいが、そう何度も続くわけじゃないんだぞ!」
「あはは。でも、トトレイも大変そうだったし、アレックスの魔法だけじゃとどめにはなりそうになかったから、私がやらないとって思って。それに、みんなには一度迷惑かけてるしさ。」
「それで、今度もやってるじゃね~か!」
「いたっ!今回は皆を信じてたから、行けると思ってわざとなのに...」
「なお悪いわ!」
「ぐぅ...トゥーグロナ、治癒魔法を...」
「無しだね。」
「そんな...」
「Ryokさん。」
「トトレイ...君ならわかってくr」
「今日の夕飯はRyokさんのおごりでお願いしますね?」
「そんなぁ…」
「それならさっさと帰るよ~!食べ放題だ~!」
「おっしゃ~!飲むぞ~!」
「僕も久々にお財布を気にせずおなか一杯になれそうだよ。」
「待って。みんな、待って...」
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