私たちの物語 #18~クァール襲来~
「アレックス!逃げろ~~~!」
咄嗟に叫びながら、矢を放つ。こいつが黒渦団が言っていたクァールだろう。
「うぉ!あっぶね~。」
放った矢は、クァールの後ろ脚に刺さり、体勢を崩すことができたお陰でアレックスは何とか逃げ出せたようだ。
「アレックス、こっちに!」
「おい、どうすんだよ。こいつ。」
「どうするって、倒すしかないでしょ~。」
「見逃してくれそうには見えませんもんね。」
「できれば会いたくなかったけど、こうなっては仕方ない。倒すぞ!」
「僕がひきつけるので、Ryokさんとアレックスで仕留めてください。」
「サポートは、私とリリィベルに任せてね。」
「はい。よろしくお願いします!それでは、行きます!」
トトレイがクァールに向かって走り出す。
「アレックス、基本はお前が攻撃しろ。私は、援護に回る。」
「了解。派手にぶち込んでやるぜ。」
「仕掛けまで壊すなよ?」
「......わかってるさ。」
不安な間だ。実に不安だ。
でかい。僕がララフェルなのもあるけど、今まで見てきた魔物の中でも大きい部類だ。それに狂暴。
でも、僕はナイトなんだ。誰よりも前に立ち、襲い来る脅威を掃わないといけない。そして、そのための力を手に入れたんだ。
忠義の盾。ナイトになって最初に教えてもらったことだ。持っている盾を最大限に使って、攻撃を防ぎ、いなし、ひきつける。こちらから攻撃することが少なるけど、それは僕の役目じゃない。僕にはアレックスが、そして今日は他にも仲間がいる。彼らへの攻撃を防ぎ、彼らの攻撃の隙を作る。それが僕の役割だ。
「さぁ、僕とお相手してもらいますよ。」
「即席の割には、いい感じね~。」
と、先輩風を吹かせてみたけれど、実際そう思う。
ララフェルの二人はそれなりに2人でやってきたところがあるだろうからわかるけど、Djの方は新米だったはず。
「冒険者じゃないってだけで、昔からこういうことをやってたのかしら?それが名前の由来?気になるわね~。」
「おい、何ぐちぐち言ってるんだよ。」
「いやね。クァールが狂暴とはいえ、トトレイ君はしっかり攻撃を防いでいるし、アレックスとあんたが攻撃するもんでクァールもいまいちうまく動けてないみたいだしで、あんまり怪我しないじゃない。そんで、私より先にリリィベルの方が回復呪文を唱え始めるしで、私としてはお仕事あんまりないのよね。もちろん、だからって突っ立ってるだけじゃないわよ?ちゃんと援護とかもしてるんだからね?」
「わかってるよ。ただ、もう少し緊張感持ちなさいよ。」
「よく言うわね~。あなただって私とおしゃべりしてる上に、弓を射ってるじゃない。やれるって思ってるんでしょ?慢心はいけないけど、自信を持つことは大事よ。」
ふむ。なんというか、Djは男らしくふるまいたいみたいだけど、時々崩れるときがあるわね。そこらへんが名前に関係あるのかしら?
「なにニヤついてんだ。」
「ん~?ふふふ、面白いと思ってね。」
「はぁ~?」
「こっちの話よ。あなたと組んでよかったわ。」
「たく、そういうの言うと不吉なことが起きるみたいだからやめなさいよね。」
また。ふふふ、面白いうえに優しいわね。
「アレックス、そろそろ決めるぞ!」
あと、かわいい。
「アレックス、そろそろ決めるぞ!」
「決めるたって、動きが速くて当てらんないぞ!」
「そこは私が動きを止める。そっちはとどめの準備をしてろ。」
「ああ、次で決めてやるぜ!」
よく狙え。一度は体制を崩したんだ。もう一度、同じようにすればできる。
矢が刺さった脚だ。狙え、絞れ、保て。
まだだ。
まだ。
まだ。
まだ。
「......ここだ。」
放った矢は、最初よりも深くクァールの後ろ脚に突き刺さった。
そして......
「倒れたな。こいつで終わりだ!食らいやがれ~!」
アレックスの魔法が倒れたクァールに直撃した。
すぐに体勢を立て直そうとしていたクァールは、うめき声をあげながらその場に倒れ、動かなくなった。
「おっしゃ~!やってやったぜ!」
「やりましたね。みなさん!」
「トトレイ君、お疲れ様~!いや~、素晴らしい戦いぶりだったよ。」
「ほんとですか!?アレックス意外とこうして一緒に戦うのは初めてなんで、そう言ってもらえてよかったです。」
「これで、仕掛けを動かせるな。」
「そうですね。早速動かしてみましょう。」
そう言うとトトレイが仕掛けに向かって走っていく。
「動かしますよ~。」
トトレイが仕掛けを動かすと、行き止まりだと思っていた岩壁が動き、奥に通路が現れた。
「へ~。隠し通路か。これは、不審者が海賊だって線が濃くなってきたね~。それにいっぱいいそうだ。」
「そうだな。おそらく中は海賊たちの拠点になっているんだろう。より注意して進もう。」
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