私たちの物語 #12~使者として、冒険者として~
不語仙の座卓
「こちらにいらしたということは、お話を聞いていただけるのですね。ありがとうございます。まずは、目が覚められて、よかったです。」
どうやらお咎めではなさそうだ。
「では、こちらを。それは同盟国へとあてた親書です。第七霊災、カルテノーの戦いから5年。我々は多くの民、仲間、そして、英雄「光の戦士たち」を失いました。そして、その傷は未だ癒えてはいません。ですが、我々は前に進まなくてはなりません。エオルゼア諸国はこの5年を節目として、近くカルテノ―戦没者追悼式を予定しています。その親書は、式典についての取り決めが記してあります。」
そんな大事なものを一介の冒険者である私に何で渡すんだ?
「あなたには私の代理としてその親書を同盟国へと届けてもらいたいのです。」
耳を疑った。グリダニアへと来てから何かと大きな事件に関りはしたけど、ここまでのことを任されるなんて...。一体なんでなの?
「5年前の戦いに従軍してくれた冒険者たちのように、あなたもまたグリダニアに尽くしてくれました。だから、この任をあなたにお願いしたいのです。」
私の思った以上に私は評価してもらっていたようだ。
驚きが大きいが、うれしいものだ。
名をあげるために冒険者になったのだ。これほど都合のいいことが起こることはもう来ないかもしれない。しっかりとこの機を活かさないと。
「同盟国である海の都「リムサ・ロミンサ」、砂の都「ウルダハ」は、グリダニアから遠く穴れた地にあります。移動の足にはこちらを使うといいでしょう。グリダニア公認の飛空艇搭乗許可証です。本来、この許可証は簡単に渡せるものではありません。しかし、あなたのグリダニアへの貢献は認められるものです。また、あなたの噂を聞きつけた「ある組織」からの是非にとの推薦もありましたので。そして、私があなたの持つ可能性に期待しているのです。」
「グリダニア盟主として、我が国を代表して、冒険者に。世界を渡り、世界を見てくるのです。赤心の前に道は開けます。きっと、マザークリスタルに導かれ、超える力を持つあなただからこそできることがあるはずです。頼みましたよ。」
急転直下...大きなうねりに飲み込まれた気がする。でも、これは絶好の機会でもある。
私は弓術士、あらゆる局面を見抜いてみせますか。...なんてね。
少々、舞い上がってしまった。超える力についてカヌ・エに聞くのを忘れていた。
それに、私の噂を聞きつけたある組織って、実に不穏な響きだ。カヌ・エとかかわりがあるのだから後ろ暗い組織というわけでもないだろうが、いったい私の何を聞きつけたんだ?やはり、超える力というものだろうか?そういえば、パパリモも私に何か言いたげだった気がする。ある組織というのは、パパリモたちが所属している組織と同じなんだろうか?そうであるなら、少々気が楽なんだけど...
そうこう考えているうちにカーライエンカフェに着いた。
「やぁ、おかえり。カヌ・エ様とはお話しすることができたかい?」
とりあえず、先ほど言われたことをミューヌに説明した。
「それは本当なのかい!?それは、君がカヌ・エ様に...グリダニアに認められた証だ。僕も自分のことのようにうれしいよ。飛空艇に乗れるということは、君は一介の冒険者にしてエオルゼア全土を旅する権利を得たということだ。エオルゼアは広い。リムサ・ロミンサ、ウルダハ以外にも人々が暮らす地はあるし、未開の場所も数多くある。冒険者の君にとって素晴らしい体験が待っているはずだ。......だけど、グリダニアに限らず、各国は様々な問題も抱えている。第七霊災からの復興も未だ終わらず、国の内訌、蛮族・蛮神問題、嫌なことにも直面することだろう。でも、君なら何とかできると僕は思っている。さぁ、飛空艇の搭乗口はここから下に降りたところにある。あっちの階段から行けるからね。」
「ありがとう。行ってくるよ。」
まず向かうは、海の都「リムサ・ロミンサ」。
「ハイウィンド飛空社、リムサ・ロミンサ行き循環飛空便、定刻通りまもなく出発です。」
いよいよ出発だ。
「リムサ・ロミンサ行き循環飛空便、出発します。」
飛空艇が動き出した。高度が上がると、見送りに来てくれていたミューヌたちが目に入った。
「これから冒険が始まる。」
柄にもなく始めた日記を開く。
私はDj Ryok。
私は冒険者。
これは私が紡ぐあなたの物語。
ここは私の物語。
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