私たちの物語 prologue4~馳せる想いは少女奇譚~
ザナラーン。砂と岩が続く、他都市からすればおよそ住みやすいとは言い難い地域。
そこが僕の故郷だ。
交易都市ウルダハにおいて財は何より大事だ。だけど、僕に商才があるとは思っていない。
じゃあ、どうするか?もちろん、何かで稼ぎを得なくては。そう、冒険者だ!
街の困りごとから、魔物退治。冒険者であれば、商才がなくともできることはたくさんある。そして、僕の夢も...
剣術士。闘技場を擁するウルダハにおいて、観客を魅了し、勝利をつかんできた攻防併せ持つ技を継承する者たちだ。僕の夢はここから始まる。
「はぁ、はぁ、はぁ...ぐっ、はぁ。」
(「なんとですね~。今なら銀冑団にしか伝わらないナイトの技を冒険者でも習得できるんですよ~。」)
話を聞いて僕は走っていた。剣術士ギルドの受付からの話が本当なら、僕の夢が最高の形で叶えられる。剣術士ギルドからそうは遠くない道も気持ちの逸りからか遠く感じた。
「ナイト...に、...なれるって...本当ですか!?」
なんというか、今思えば、新しいおもちゃを買ってもらえる子供の様だった。その目はキラキラしていて、汗だくで、肩で息をしていたことだろう。
「私が銀冑団、総長のジェンリンスだ。君もナイトの戦技に興味があるのか?名前は何というんだ?」
「はい!トトレイ、トトレイ・ララレイです。」
「そうか。では、トトレイよ。君にナイトの戦技を教えるとともに自由騎士の称号を与えよう。しかし、その前に君がナイトの戦技を受け継ぐにふさわしいかを試させてもらう。」
「はい!」
それはどこにでもあるただの御伽噺。不幸にあえぎながらも最後に幸福へと至る少女奇譚。
でも、なにもない日々を過ごす自分にとって、それは何よりも素晴らしく見えた。いつか...
「いつか彼女を救う騎士に!」
ジェンリンスさんからの課題をこなしていくたびにナイトの戦技を教えてもらっている。冒険者として特別な成果を持っているわけでもなかった僕にこんな機会があるだけでも幸運なのに、そこからは少しづつ依頼も大きなものとなっていってこの前はかなりの成果を出せた。そして、海の都リムサロミンサと森の都グリダニアへの使者の役目を任せられるなんて!僕の夢はまだまだはるか先だけど、そのために着実に進んでいる実感が確かにある。
そして、目標は同じではないけど、僕と同じで夢を追いかけている冒険者仲間を見つけることができた。
僕の、そして彼の夢のため、まずはキミを守り抜こう。
僕はトトレイ・ララレイ。
小さな体だ。
みんなを守れるほど強くない。
できないことがいっぱいだ。
でも、絶対にくじけない。
「眼前の脅威、その悉くを打ち払おう。」
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