私たちの物語 prologue3~思い馳せるは英雄譚~
「おそい!」
ここは砂の都、ウルダハ。冒険者ギルド内にあるテーブルにて怒るララフェルが一人。
「あ~、待たせてごめん。」
さらに、甲冑を着込んだララフェルが。どうやら、待望の待ち人のようだ。
「おい、いつも時間は守れって言ってるお前がこのありさまとはどうなんだ!オレがしっかりしてる時に限ってこうなりやがって。」
「悪かったよ。ちょっと今回の課題で手こずっちゃてさ。」
「たくっ、今回はいつもとは違うんだぞ?お前、わかってんのかよ。な・ん・で!課題なんざを今日やるんだよ!」
「悪かったよ。しかし、いつもは時間ぎりぎり、遅刻も多数なキミがしっかりと時間に来るなんて、案外緊張してるのかい?」
「うるさい!集まったんだから行くぞ!」
「はいはい。わかったよ。それじゃ、僕らの夢をかなえにいこう!」
それはどこにでもあるただの作り話。悪いやつを仲間と力を合わせて打ち倒す英雄譚。
でも、退屈な日々を過ごす自分にとって、それは何よりも輝いて見えた。いつか…
「いつか冒険の旅に!」
残念なことにオレは非力だった。剣を握ることはできる。振るうこともできる。でも、それだけだ。誰かを打ち倒すにはあまりに非力だった。
あこがれた英雄たちには遠く及ばない。
だけど、あきらめない。そう、なぜなら英雄たちはあきらめなかった。英雄たちも敗北を味わっていた。無敵の英雄もいたけど、知略の英雄もいた。
「オレは...絶対にあきらめない。」
そんな時だった。呪術を知ったのは。
オレはアレックス。
無敵ではないかもしれない。
知略に長けないかもしれない。
悪に倒れてしまうかもしれない。
だが、絶対にあきらめない。
「目の前の壁、その悉くを砕いてみせる!」
0コメント