私たちの物語 #10~宴と誘い~
グリダニアに帰ってきて数日。私は神勇隊指令室に顔を出した。
「おお、よく来たな。先日はご苦労だった。イクサル族に加えて、不審者騒ぎまで解決してくれるとは、我々神勇隊もお前を見習わねばならんな。Dj Ryok。お前は、良い腕、良い根性、そして、良い目を持っている。いつかきっと名だたる冒険者となるだろう。」
......なんというか、とても褒められている。それだけ長老の木はグリダニアにとって重要であり、不審者騒ぎも頭悩まされるものだったのだと実感する。
良い目か...。
”放つ一矢により戦況を動かす戦場の支配者たる弓術士。弓術士ギルドはそのために必要な「目」を鍛える場。”
弓術士ギルドに入った際、ギルドマスターから言われた言葉だ。
冒険者として、そして、弓術士として成長できたということだろう。素直にうれしい。
「あなたに近づいた気がするわ...」
「ん?何か言ったか?」
「ああ、何でもない。気にしないでくれ。」
思わず口に出ていたようだ。
指令室で称賛を受けたり、何でもない話をしたりしながら話していると、不意に指令室の扉が開いた。
「こんにちは。皆さん。」
「カヌ・エ様。どうしてこちらに。」
「長老の木での件を聞きまして。この度はご苦労様でした。」
「あなたがグリダニアに力を貸してくださっている冒険者ですね。ご高名はかねがね。私はカヌ・エ・センナ。グリダニアの政を任されているものです。お見知りおきを。」
驚いた。まさかグリダニアのトップが来るとは...
「この度のこと、聞き及んでおります。グリダニアの平和のために尽力してくださり、ありがとうございます。グリダニアを代表し、感謝いたします。こちらはグリダニアへお力を貸してくださっていることへの御礼です。お受け取りください。」
なんというか…思いもよらない展開だ。
「それから、グリダニアでは間もなく大御霊祭りがあります。これは祭を通して感謝の意を表し、精霊の怒りを鎮める儀式であります。冒険者殿、どうかこの祭りの主役になってください。お待ちしておりますね。」
「それから...これからもグリダニアにあなたのお力をお貸しください。それでは、あなたにクリスタルの導きがあらんことを。」
言うだけ言って、帰られてしまった...。大御霊祭り...は、まぁいいとして、主役って何なんだろうか?
「まさか、カヌ・エ様から直々にお褒めの言葉をいただくどころか、祭りの主役までとは。異邦人であるお前にはわからんだろうが、大御霊祭りの主役とは大変に名誉なことなのだ。」
祭の主役は、どうやらグリダニア人にとって相当にすごいことのようだ。リュウインが興奮して説明している。
しかし、名声は欲しいけど、目立ちたいわけじゃない。でも、これは断れそうにもない...はぁ。
「こうなれば、祭りに向けて準備が必要だ。ミューヌなら祭事の段取りについても知っているから助言をもらうといいだろう。主役がいなければ、祭りが始まらん。急いで準備をしてくれよ。」
もう少しゆっくりしておきたかったが、せかされてしまった...。なんというか、状況が目まぐるしく動いていく。うれしさとともに、不安もこみ上げる...。
「いつか、悪いことが起きそうだわ...」
「やあ、Ryok。活躍は聞いているよ。カヌ・エ様から大御霊祭りに招かれたんだって?やれやれ、君には本当に驚かされるよ。大御霊祭りは、人と精霊の交わりを強め、絆を深めるための儀式だ。その主役ということは、カヌ・エ様が君を人と精霊の懸け橋として選んだってことさ。グリダニアの人以外が主役になることはめったにないことなんだ。」
「さて、そうなると祭りの準備を始めないとね。まずは木工師ギルドのベアティヌから祭りから祭りに必要なものをもらってきてくれ。そのあとのことはそこで教えるからさ。」
ベアティヌ......苦手だ。木工師ギルドでもたまに会いはするけど、少々...不気味だ。もう少し付き合いが長くなればそうでもなくなるのだろうか...もう少し、ギルドに顔を出すとしようかな?
「よく来ましたね。ミューヌから話は聞いていますよ。フフフ、例のブツは準備できています。私が丹精込めて作った特注品ですから、くれぐれも気づつけたりしないでくださいね...。フフフ、フフフフフフフ...」
.............何も言うまい。悪い人ではない。ただ、それだけに損をしていると感じる。
「お、もらってきてくれたかい。では、それをこちらに。」
ベアティヌから受け取った箱には仮面が入っていた。
「これはね、セヌアの仮面というものなんだ。長老の木から削り取った木から作った疑似起用の特別な仮面なのさ。さぁ、祭りの準備はこれでおしまいだ。そろそろ祭り会場の準備も整うだろうし、大御霊祭りに行くとしようか。説明はそこでするよ。」
祭りが終わったら、もう少し休もう...
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