私たちの物語 #30~あの日、あなたと...~
「あんた、名前は?」
「Ryok。」
「リョ...なんだって?」
「ま、好きに呼びなよ。どうやら、呼びにくいみたいだしさ。」
「ミコッテにいくらか知り合いがいるが、あんまり聞かない名前だな。」
「まぁね。私が勝手に名乗ってるだけだから。」
「なんだそれ。」
「私、親がいなくってさ。自分の名前もわかんないから、なんとなくいいなって思った響きをそのまま使ってるんだよ。」
「...なんか、悪いな。」
「別にいいよ。今更どうしようもないじゃない?それで、そっちは?」
「ん?」
「名前。そっちはなんていうのさ。」
「ああ、俺はDarren。Darren Jaegeaだ。」
「で、これは私が貰っていいわよね?」
「おいおい、おれの矢も刺さってるだろ?」
「でも、とどめは私でしょ?矢も当たりそうになったんだけど?」
「あ、ずるいぞ!それは、仕方ないだろうが!」
「ふふ、冗談よ。あなた、この辺りに住んでるでしょ?案内してよ。」
「何?」
「二人で食べようってこと。......あと、住まわせてよ。私、家もないのよね。」
「はぁ~?やれやれだぜ...」
「あんたの矢で死にかけたんだから、それくらいいいでしょ?」
「Dj!」
アレックスの叫び声で我に返る。
壁が割れて、巨人が現れたところだった。
これが依頼にあったヘカトンケイル族か。なんて、のんきなことを考えている間に、巨人の持つ棍棒が私に迫っていた。
「Dj!!!」
「ぐわっ!」
巨人に殴られて吹き飛ばされる。
「Dj、集中しな!そう何度も助けられるとは限らないんだからね!」
間一髪、トゥーグロナの魔法が巨人の一撃から守ってくれたようだ。
「ちっ、トトレイ!一旦、退くぞ。」
「了解。援護を。」
トトレイとアレックスが連携を取りながら後退してくる。
「ほら、一回退くよ。シャキっとしな。」
「ああ、ごめん...」
私は、ふらふらと撤退するのだった。
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