私たちの物語 #27~進む者、去る者~
「面倒な術を使う上に見た目も最悪で、墓場で戦闘なんてさんざんな依頼だったな。」
「トゥーグロナさんにあれだけ言っておいて、自分もお墓が嫌だったの?」
「墓場に参る用も無く行くなんて、誰だって気持ちのいいもんじゃないだろ。」
「ま、それもそうだよね。」
タムタラの墓所でカルト集団が行っていた儀式に介入して、呼び出されていた妖異も倒した後、私たちはグリダニアの街へと帰っていた。
「今回も大変だったね~。」
「でも、なんとかなりました。僕たち2人の時は何かと危ない場面も多かったんですけど、トゥーグロナさんからサポートを受けられるし、Ryokさんの指示もあるしで安心です。」
「なんだぁ、オレだけとの時はサポートや指示がなかったてか!」
「だって、アレックスのサポートってやられる前にやるってことでしょ?それに、指示も魔法にあたらないように避けろってだけだし。」
「アレックス君らしいね~。」
まだまだ短い付き合いだが、こうして談笑しながら依頼をこなしていけるのは、素晴らし事だ。
これはトゥーグロナの存在が大きい。なんというか、話し方や態度からはふざけた奴に見えたけど、実際は周りをよく見ているし、冒険者としての実力もある。落ち着いて任せられる雰囲気が一緒にやってきてわかる。
トトレイとアレックスももともとは2人でやってきたはずなのに、こうして私たちと一緒になってからはこちらも意識しながら過ごしてくれている。特にトトレイは何かとこちらを気にかけてくれている。アレックスも口は悪いが、いいやつだ。口が悪いのはお互い様だしね。
「しかし、今回も疲れたよ。これが終わったら、ゆっくりしたいね~。グリダニアもリムサ・ロミンサとはまた違った気持ちよさがあるところだしさ。」
「そうだな。」
「やぁ、帰ってきたんだね。無事に依頼を終えたそうじゃないか。リュウィン隊長も礼を言っていたよ。おつかれさま。有能な冒険者が来たって、ギルドは君たちの噂でもちきりさ。」
「そうなのかい?ありがとう。」
「僕たちの知らないところでそんなことになってたんですね。」
「やったな、トトレイ!」
「ただ、最近になって、冒険者ギルドへの依頼が急に増えてきているんだ。それに伴って、冒険者の事故も増加の一方でね。......見てごらん。」
ミューヌはそう言って、カーライエンカフェの端でなにやら言い争っているような冒険者パーティの方を指した。
どうやら、パーティを組んでいた内の一人が功を焦って命を落としたようだ。
「あのパーティのような事例を、ここ数日で何件も目にしている。君たちのような有能な冒険者の現れてくれたことによって、少しでも犠牲が減ることを願っているよ。」
「......あぁ、本当にそう願うよ。あんな馬鹿はもう見たくないからね。」
「ん?なにか言ったかい?」
「いや、そうだな。頑張るよ。」
「そんな君たちに頼みがある。先刻、冒険者ギルドの連絡網に情報が回ってきたんだ。今度は、ウルダハの冒険者ギルドで冒険者を募集しているらしい。君たちなら、いや君たちだから紹介できると思ってね。ぜひ、この依頼を受けてもらいたいんだ。よろしく頼むよ。」
「やれやれ、お休みはもうちょっと先みたいだね~。」
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