私たちの物語 #29~冒険者の生~
カッパーベル銅山に着いてから依頼を受けたらしい冒険者に声をかけられた。
「ねぇ、あなたたち。ドールラス・ベアーって冒険者と知り合いだったわよね?」
「あぁ。と言っても、少し話した程度だが...どうかしたのか?」
「実は、...さっきその人たちのパーティの遺体を銅山から運び出したの...あの人たち、ベテランの冒険者だったんだけどね...」
「えっ...」
「おいおい、マジかよ...」
「彼らは、あなたちに冒険者としての可能性を見出したんでしょうね。そして、その姿を見て焦っていたわ。それが、事故を生んでしまった。富や名声を目標に掲げることは素晴らしいことよ。でも、目標を大きくしすぎて、足元を見失ってはだめよ。......頑張ってね。」
不意に告げられた顔見知りの死に、心を揺さぶられた...
「おい、大丈夫か?」
「えぇ。大丈夫よ。大丈夫。......あなたからそんな言葉が聞けるとは、驚きね。アレックス。」
「はぁ、無理にそんなこと言わないでいいんだぜ?交流がそれほどなかったとしても、顔見知りが死ぬってのはこたえるもんだろ?」
「近くに町もありますし、今回は銅山の責任者に話を通すだけにして、一旦、帰りますか?」
「ありがとう。2人とも。でも、大丈夫。少し、驚いただけだよ。」
自分のせいだなんて思ってしまうとは、なんと傲慢なんだろうか...
でも、考えずにはいられない。あの時のように...
いつか、彼らともそういう瞬間が来てしまうのだろうか...
そんなことばかり考え始めてしまった。
「鉄灯団の方ですか?僕たちは、パパシャンさんからの依頼で巨人族の鎮圧に来たんですが。」
「おお、こんなにも早く来ていただけるとはありがたい!さっそく鎮圧にかかってくれたまえ。関係者以外は銅山内に立ち入らせないようにしっかり見張っておくからな。」
「それじゃぁ、行きましょうか。さっきの話もあったことですし、十分に気を引き締めて行きましょう。」
「ああ、そうだな。」
大丈夫。
きっと大丈夫。
私はやれる...
だって、私はあの人なんだから。
あの人ならやれる...
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