私たちの物語 #15~弓と剣と杖に本~
「ねぇ、依頼を受けたのはいいけどさ、2人で大丈夫かな?」
「今までだって2人だったろ?大丈夫だろ。」
「そうだけど、今回は洞窟のなかで、危険な魔物の住処なんだよ?それに加えて、海賊だったりがいるかもしれないんだから、分け前は減るけどもう少し仲間を集めない?」
「たく、リムサ・ロミンサでならまだしも、ここに来てそれかよ!」
「だって、宿屋の方で何人か怪我してる人たちを見かけたし、それ見たらさ...」
西ラノシア、エールポートにて言い争うララフェル二人。
「わかったよ。ここで死んだら意味がない。どうせ洞窟の調査は明日から予定なんだ。今日は仲間を探すとしよう。それでいいな、トトレイ。」
「うん。そうだね。そうしよう。」
「んで?あんたさ、Djって何よ?」
「……。せっかくの申し出だったが、この話は無しにするか?」
「あ~。今のは無しね。無し。うんうん。で、これからどうするのよ?今から行ったら夕方だよ?」
「今日はここで準備をしてからエールポートに向かって、あっちで宿をとる。洞窟の調査は明日からだ。」
「わかった。それじゃ、これ。私との連絡用のリンクパール。準備するんなら、いったんここで別れましょ。エールポート行の船の前で待ち合わせってことで、行くときにでも連絡してよ。こっちが先に終われば、私も連絡するからさ。じゃね~。」
そう言って、トゥーグロナは立ち上がった。
「あ、名前の件はごめんね。気になったら、知りたくなる性分でさ。」
「ああ、こっちも悪かったな。」
「じゃ、またね~。」
それだけ言って、彼女は溺れた海豚亭を出て行った。
「さて、私も腹ごしらえは済んだし、準備に取り掛かりますか。」
「ふぅ、思ったより時間かかったね~。もう、日が落ちる時間だよ。」
「そもそも、依頼を受けた時間が遅かったからな。んじゃ、宿にいくよ。」
「はいよ。」
予定通りリムサ・ロミンサで準備をして、エールポートに到着した。
今日はここで宿をとって、明日の朝からサスタシャ浸食洞へ調査に出る。
「それじゃ、部屋とってくるから。」
すると、何やら話をしながら宿に入ってくる二人組がきた。
「しかし、ここまで来てるやつらは誰かしらと組んでるだろうから、あんまり期待はできないと思うけどな。」
「違う土地での依頼ってことで、ちょっと臆病になってるかも...。ごめんよ。」
「ま、名をあげるのは大事だが、死んだら意味がないからな。しかし、騎士様なんだからもうちょっと気概を見せてほしいもんだぜ。」
「うぅ、それを言われたら何も言い返せないよ...」
「ははは!ダメなら、今回は洞窟に入ってから決めようぜ。なに、奥までいかなければそこまでの強敵は出てきはしないさ。一応、人が周りにいるわけだしな。」
「そうだね。ダメそうなら、何か依頼を探してくるよ。」
「たのんだぜ。騎士様よ。」
聞こえた内容から考えるに、洞窟まで行って引き返してきた冒険者のようだ。
「お~い、あんた部屋が取れたんなら、悪いがどいてくんね~か?」
すると、二人組のローブを着た魔術師風のララフェルが来ていた。
「ああ、悪い。終わったよ。」
「トゥーグロナ、部屋が取れたぞ。鍵だ。」
「はいよ。ありがとね。」
「なぁ、さっき入ってきたララフェル二人組なんだけど。」
「え、誰のことだい?」
「ほら、受付の方にいるローブのやつと、あっちに座ってる鎧着たやつ。あのさ、あの二人も一緒じゃダメか?」
「なに、知り合いなの?」
「いや、そういうわけじゃないんだけど、なんか気になってさ。まだ、あっちにも声かけてないんだけど、どう?」
「なんだいそりゃ?一応、わかってると思ってるけど、分け前は減るんだよ?」
「それがあるから聞いてるんだよ。私は、別に今、金に困ってないけど、あんたはそうでもないんだろ?あっちがなんか組む相手を探してるみたいでさ。熟練ってわけではなさそうだけど、へっぽこでもなさそうだし、足手まといにはならないと思うんだ。報酬のこと考えなければ、数はあっても困らないだろ?」
「あ~。まぁ、私も懐さみしくはあるけど、そこまで困ってるわけじゃないしね~。......うん、いいんじゃないかい。面白そうだしね。」
「ほんとか!それじゃ、声かけてくるよ。」
「な~にが気になったんだろうね~。」
見たところ、確かに彼女の言う通り、駆け出しみたいだけど、それなりに経験を積んでも来ているみたいだし、組む相手としてそこまで問題はない。鎧を着てるってことは、前衛を務めているんだろうし、もう一人は呪術師みたいだ。前衛がひきつけて、後ろから一気に倒すって算段だろうか?作戦としても悪くはない。ある程度の数までならだけど。洞窟内の地形を知らず、また、敵の数もわからないってことで、今まで通りじゃこなせないと思ったんだろうか?ここにきて仲間を集めるのはいまいちだけど、その判断は間違ってない。そこまで頭が回るんだったら、組んでも問題ないか。
「って、全部私の想像だけどね~。」
一通り考えたけど、なんであれ組む相手としてそこまで問題はないか。
「興より始めよ。あの子が気になるっていうんなら、組んでみましょうかね。私も興味が出てきたし。」
二人組は、部屋をとったみたいだが、まだエントランスの方で話をしていた。
「なぁ、あんたらサスタシャ浸食洞の調査で組む相手を探してるんだろ?もしよかったら、私たちと組まないか?」
トゥーグロナの許可もとったし、さっそく声をかけてみた。
「そうだが、なんで知ってんだ?まだ、誰にも声をかけてないんだが?」
怪しがられてしまった...
「いや、2人が宿に入ってきてる時の話が聞こえてさ。で、どうだ?組んでみないか?こっちも2人。私が弓術士で、もう一人が学者なんだが。」
「おいおい、あんたはまだしも、もう一人は学者だと?組む相手は欲しいが、戦えないやつのお守りはできないぞ?」
「あ~。そうだよな。学者って聞いたらそうなるよな。安心しろ、学者といっても普通のやつじゃなくてって、説明が面倒だな。ちょっと特殊な巴術士だと思ってくれ。戦えるやつだ。」
学者と聞いたら普通はそういう反応だよな。トゥーグロナは杖を持っていなかったので、どうやって魔法を使うのか尋ねてから、学者の説明になった。とりあえず、特殊な巴術って言ったけど、魔導書を持ってるし、間違いではないよな?
「それで、どうだ?組める相手を探してるんだったら、私たちと組まないか?もちろん、報酬はしっかり分ける。」
「どうする、トトレイ?」
「悪い人じゃなさそうだし、キミが良ければ、僕は問題ないよ。もともと、僕が言い出したことだしね。」
「そうか。......それじゃ、こちらからもよろしく頼む。」
「よし、交渉成立だな。よろしく頼むよ。洞窟には明日行く予定なんだが、そっちも部屋をとったってことはそのつもりだってことでいいんだよな?それなら、これから自己紹介ついでに夕飯に行かないか?」
「そうだな。急ごしらえだし、紹介くらいすぐにやったほうがいいな。」
「よし。決まりだな。それじゃ、うちのを呼んでくるから、少し待っててくれ。」
上手くいってよかった。
だけど、なんであの二人を気になったんだろうか?
仲間を探していたから?話が聞こえたから?それとも...
「...羨ましかったから?」
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